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=== カーネル空間とユーザ空間 ===
プログラムが動作する時、システム上では2つの処理空間で処理が行われます。1つはユーザ空間(User space)、もう1つがカーネル空間(Kernel space)です。この2つの空間を行き来して処理を進めます。といっても、プログラムが動作する際、どちらの空間で処理されているかといったことをユーザが意識する必要はありません。
ユーザ空間は、ユーザに割り当てられる計算リソースで、実行しているプログラムが直接アクセス可能なリソースです。
一方、カーネル空間はユーザが直接アクセスできない空間です。システムコール(UNIXのカーネルAPI) を呼ぶことや、
あるいは/sys/以下のファイルのようにファイルの形でカーネルへのインタフェースを介してカーネルの機能を利用できる形にしています。ユーザからは直接カーネル空間を操作することはできません。Kernel(核)という言葉は元々は堅い殻に守られた種の意味ですが、この意味のようにユーザ側から見ると、カーネル空間は堅い殻に守られたオペレーティングシステム内部というように見えます。以下のファイルのようにファイルの形でカーネルへのインタフェースを介してカーネルの機能を利用できる形にしています。ユーザからは直接カーネル空間を操作することはできません。Kernel(核)という言葉は元々は堅い殻に守られた[https://en.wikipedia.org/wiki/Drupe ''種の意味'']ですが、この意味のようにユーザ側から見ると、カーネル空間は堅い殻に守られたオペレーティングシステム内部というように見えます。
[[File:User-kernel-mode-2.png|thumb|left|300px|write(2)実行時のタイムライン]]
ここでプログラムがデータを処理し、ファイルにデータを書き込む時を考えてみましょう。ユーザ空間でデータが処理され、write(2)でファイルに書込にいきます。すると、制御は一旦カーネル空間に移ります。カーネルでの処理が済んで、またユーザ空間に戻ってきます。このようにカーネルはユーザ空間で動くプログラムの制御と、カーネル内での必要な資源の提供と管理を行っています。以下に単純化したモデルを示してみます。
;補足: write(2)と書いている2の意味はオンラインマニュアルの区分を示しています。2はシステムコール、3はライブラリの意味です。 manコマンドにオプション 2 write と与えるとwrite(2)が表示されます。
==== システムコール ====
システムコールはユーザ空間からカーネル空間で処理を行うための切替えポイントです。今風にいうならばカーネルとのAPIとして用意された関数群です。UNIXではシステムコールと呼びます。
<ref>
/usr/share/man/man2
;調べてみよう: 今使っているLinuxにはおおよそいくつのシステムコールが用意されているのが調べてみよう。次に、既に使われなくなりなくなったシステムコールと、互換性のために残してあるが使用するのに推奨されていないシステムコールを1つ以上みつけてみよう。欠番となっているシステムコールを探すには [http://uc2.h2np.net/misc/codes/unistd/ /usr/include/asm/unistd.hがヒントになります。h] がヒントになります。
(ただし2.6系以降では削除されています) は、ある種のhttpリクエストのベンチマークに対して驚異的なhttpリクエストを処理します。
;補足: khttpd は本気でWebの能力をカーネルに入れるためではなく、質の悪いベンチマークテストへの皮肉として入れているので、Web処理を本気でカーネルで処理しようとしたなどと誤解しないようにしてください。
==== システムコールとライブラリ関数 ====
もう少し、システムコールとライブラリ関数の関係を見てみます。システムコールであるwrite (2)と ライブラリ関数であるfwrite(3) は、一見似たようなものに見えます。
fwrite(3)
#include <stdio.h>
size_t fwrite( const void *ptr, size_t size, size_t nmemb, FILE *stream);
fwrite(3)の方は、ユーザ空間で動作していて、さらに入出力を効率的にするためのバッファを用いています。バッファはファイルポインタFILE *stream が保持しています。/usr/include/libio.hの構造体である [http://uc2.h2np.net/misc/codes/libio.h.html#N245 struct _IO_FILE ] を見てみるとわかります。ですからfwrite(3)を呼び出したからといって、その先のファイル(あるいは書き出す実体)へ書き込んでいるとは限りません。
write(2)はオープンしているファイルディスクリプタfdに書き込みます。これはファイル(書き出す実体)へ、データを書き込みます。write(2)を使うと入出力効率が落ちるならば、fwrite(3)のような機能をシステムコールレベルでサポートすればいいではないかという考え方をしたくなるはずです。
;補足: カーネルでも一般的なアプリケーションでも、よく見られる傾向です。もちろん"Small is Beautiful"という言葉が好きなUNIX文化圏では、基本的なレベルに分割されるべきソフトウェアが肥大していくのは好ましくない傾向であると考えられています。しかし、現実には肥大する方向に向かっているのも事実ではあります。
=== カーネルの構造 カーネルを機能から見てみる ===
カーネルの構造を考えるために、カーネルが提供している主要な機能を書き出してみます。この分類はカーネルのソースコードレベルで分類しているのを参考にしています。個々のソースコードファイルは機能別に分割されており、さらにディレクトリは大きなレベルでの機能の違いで分類されています。これを分類の指針とするとかなり判りやすくなります。
[[File:Layer-of-System.png|thumb|right|400px|System Layer]]
個々の説明は後の章に譲るとして、ここでは概観と個々の機能の簡単な説明をします。
;補足: ここに書き出しているものがカーネルのすべての機能というわけではなく、この授業用テキストで取り上げる注目点をリストアップしています。
* プロセス管理
** プロセス生成・消滅
** スケジュラスケジューラ
[http://uc2.h2np.net/index.php/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%BB%E3%82%B9%E7%AE%A1%E7%90%86 プロセス]
とはオペレーティングシステム上で動いている実行実体です。
ユーザーは意識することなくプログラムが動いている、程度の認識しか持ちませんが、プロセスは実行を行うための計算資源を管理しています。
[[プロセス管理]]とは、プロセスの生成と消滅についての処理と、そのプロセスのスケジュールを管理するスケジューラの部分です。利用しているCPU数と比べプロセス数の方がはるかに多いわけですから、プロセスに上手に計算資源を割り振ってあげなければなりません。
* SCHED_FIFO: First-In-First-Out
* SCHED_OTHER: デフォルトのLinuxのタイムシェア
* SCHED_BATCH: バッチでの処理を行う(2.6.12以降)
* SCHED_IDLE: 非常に低いプライオリティ
2.6.12ではあたらしくSCHED_BATCHのスケジュールが加わり、
2.6.23ではCFS( Completely Fair Scheduler )スケジューラ
</ref>
が使えるようになりました。
==== ファイルシステム ====
ファイルの中身というのは最初から最後に向かって1バイトづつのデータの列であるだけでそれ以上でもそれ以下でもありません。
カーネルでは、そこまでしか関知しません。データの扱いに関してはプログラム側が決めます。
;調べてみよう: 大型汎用機<ref>http://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/soft1/VOS3FSVOS3/v3ga0226index.htmhtml</ref>ではどのようにファイルを扱うのか調べてみよう。
[http://e2fsprogs.sourceforge.net/ext2.html ext2]、
[http://e2fsprogs.sourceforge.net/ext2.html ext3]、
[https://ext4.wiki.kernel.org/index.php/Main_Page ext4]、
[http://oss.sgi.com/projects/xfs/ XFS]、
[http://jfs.sourceforge.net/ JFS]、
[http://oss.oracle.com/projects/ocfs2/ OCFS2]
などいろいろな種類のファイルシステム<ref>ReiserFSは、まだカーネルに入っているが、あえて抜いた。ReiserFSは、まだカーネルに入っていますが今後のメンテナンスがみこめないためリストに載せていません。</ref>が用意されています。ファイルシステムの部分でも、このようにレイヤ化されています。また名前付きパイプが用意されています<ref>https://help.ubuntu.com/community/LinuxFilesystemsExplained</ref>。ファイルシステムの部分でも、このようにレイヤ化されています。また名前付きパイプ(FIFO)はプログラム間でデータを"流す"ために使われる見かけ上のファイルです。あるいは/procなどのファイルは、実際にはファイルではなくファイルのように見せかけたカーネルとのAPIになっています。
;補足: /p/tcp/www.sample.com/wwwというファイルをアクセスするとwww.sample.com の www ポートがアクセスできるというファイルシステム [http://www.usenix.org/publications/library/proceedings/neworl/stevens.html Portalsを4.4BSDに対して実装]した人もいます。
==== プロセス間通信 ====
セマフォを介してプロセス間で正しい処理順番を確保するような仕組が出来るようになっています。
どのプロセスからもアクセスでき、そして情報の書き込み、取り出しに関しては順序を守ってくれます。
</ref>
==== 記憶管理 ====
メモリ空間といってもプロセス自体はハードウェアのメモリを直接意識していません。
カーネル側がプロセスに割り当てた仮想的に扱う記憶空間を管理しているため、
シェアードメモリはプロセス間で同じ記憶空間を共有するメカニズムです。
==== ネットワーク ====
現代において、ネットワークの機能はオペレーティングシステムの中でも重要な役割を果たすようになっています。
;調べてみよう: 使っているカーネルのバージョンでは、どんなプロトコルをサポートしているだろうか。
==== デバイスドライバ ====
;調べてみよう: 1GBのファイルをブロックデバイスに見立てその上にファイルシステムを構築しマウントするためには、どうすればよいのだろうか。(参考: [[Loopbackを使ったファイルシステム]])
== 脚注 ==
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[[目次]]へ
このページへのショートURL: http://uc2.h2np.net/i/1a.html